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004Tie,
Hook, Weave 

日本語⇄むすぶ・ひっかける・あむDesty銀座新2号店<p> Desty銀座2号店がテナントビルの契約更新が出来ず退去を余儀なくされてしまったため、急遽新店舗を作ることとなった。事業計画上見込んでいない出費のため、予算は無い。最初から工務店への依頼はあきらめ、関係者によるDIYが前提である。解体もせず、壁・床・天井の仕上げ、照明、空調などの設備もそのままで、仕切りによって空間を分節してパーソナルトレーニングとグループレッスンができる状況を作り出す必要があった。</p><p> パーソナルとグループを両立する仕掛けとして、蔀戸から着想した上下に跳ね上げられる仕切りを部屋の中心においた。ワンアクションで天井にひっかける/おろすために帆布の上下に木の棒を通しておもりを兼ねた持ち手とした。このアイデアをきっかけに、さまざまな色・テクスチャ・重さの仕切りがその場その場にバラバラと存在するあり方を考えた。</p><p> 部屋の既存レイアウトの都合上、窓際にスタッフの荷物や収納が置かれる。下半分を合板、上半分をポリカの仕切りとして自然光は室内まで届かせつつ、トレーニングエリアから見えない仕掛けとした。窓際のコーナー部分は時間によって様々な方向から自然光が差し込む。その時々によって表情を変える半透明の玉虫フィルムで部屋を分節し、その背後に小さな植栽を置いた。Desty銀座2号店で特徴的な木の造作建具を解体し運び込み、今度は部屋の角に着替えスペースの仕切り壁として再利用した。トイレ前がそのまま見える仕様であったため、心理的な距離を作るために編み物用のチャンキーヤーンで木の棒を編み込み、タペストリー状の仕切りを天井からつるした。</p><p> そして、それらバラバラなものを1つに繋ぎとめて空間に構造を与えるため、全ての素材を「穴をあけて紐で結ぶ」という単一の手つきで扱った。DIYのための施工性という、必要に迫られて生まれたこの単純な納まりによって、思いがけず、自分の手で物を作る喜びを再発見することが出来た。</p> -
003The
Ultra- Three- Dimensional Interior Space of a Old Wooden Commercial Building 

日本語⇄木造商店建築の超立体的内部空間Yagisawa Showcase<p>駅のプラットフォームからよく見える、築50-60年の木造店舗に構造補強を伴う改修を施し、テナントとして貸し出せる状態にすることが求められた。このような昭和に作られ駅前に密集している小規模木造商店建築は、ある種どの街にも存在し記憶の中の街並みを構成する一方で、テナントがいなかったり常連の客だけで賑わう入りにくい店だったりと、今となっては街の活気に貢献しているとは言い難い。</p><p>既存建物は何の変哲もないフラットな外観の建物であるが、中に入ると増改築が繰り返され、柱がずれていたり、急勾配な階段が錯綜したりと、立体的な空間が広がっていた。もう少し観察してみると、これまでに変わっているもの・変わっていないものがあることが分かった。梁と外周の柱は各階の柱を受け、また外壁ラインを規定しているため、変更されていない。逆にそれ以外の内部の柱・床・開口・建具・階段は何かしら手が加えられていた。外周の柱と梁で各階が規定されているので、各階はそれぞれの都合で柱を含め自由にレイアウトすることができ、その結果それぞれの階が整合していない立体的な内部空間が生まれているのである。</p><p>これを可能にしているのが木という素材である。柔らかく加工しやすいため、特殊な技能が無くても住み手が自由に改造していける。そして、内部が立体的ということはそのための取っ掛かり・下地が十分に存在することを意味する。</p><p>この立体的内部空間と木材の加工性の2つが正のフィードバックを繰り返し、超立体的な内部空間に結実したのだと思う。</p><p>今回の操作としては、この融通無碍で豊かな架構をより強調するようにエントランスの上部の床を抜き、人を迎え入れる場所とした。また床を抜いた部屋の押し入れ部分はそのまま残し、白く塗装して駅からよく見えるショーケースに見立て、立体的な木の架構と街を直接繋げることを試みた。</p><p>このような建物は特殊なものではなく、むしろ駅前にありふれたものだと言えるだろう。それらが集団としてオープンに開かれた際に駅前体験がどのように変わるか見てみたい。</p> -
002Finishing
with Light
日本語⇄光で仕上げるDesty中目黒店<p>テナントビルは数十年前に建てられた小さな雑居ビルで、スケルトン状態であった。検討を進める中で、トレーニングに必要な適切な硬さの床と最低限必要な個室・トイレの仕切り壁新設、各種設備費で予算のほとんどを使ってしまうことがわかった。</p><p>そこで、不可避的に見えてしまう既存のコンクリート躯体をどう扱うかがテーマとなった。</p><p>まずは、荒々しい躯体を背景に後退させ家具や植栽などで空間を設える方向性や、躯体をモルタル補修してインテリアとのキメを揃える方向性、すなわち、閉じた空間内に一つの世界観を作り出すことを検討した。</p><p>その時に問題になったのが、既存のサッシであった。</p><p>既存のサッシは生活感のあるシングルの網入りガラスで中桟があり、ガラスにはひび割れ、フレームにはゆがみがあった。つまりは即物的すぎるためにどのようにその他を設えたとしても馴染まないのだ。当然、サッシを取り替える予算はない。</p><p>あるいは、この即物性を逆手に取り、仕上げる部分と仕上げない部分を明確に分け、その解像度の差を表現することも考えたが、これでは店舗としての差別化は出来たとしても、“デザインのためのデザイン”になってはいないかという疑念があった。</p><p>ノイズが少なく集中できる環境で、自らの身体に向き合うというトレーニング行為の質を高めるような、上品なスケルトン空間を作れないだろうか。</p><p>初心に帰り改めてそのような考えのもと、ファブリックで既存サッシの存在感を弱めつつ、透過した柔らかい光で空間を満たすことにした。</p><p>場所ごとに質感・軽さ・透過性の異なる4種類のファブリックを選定しワイヤーで吊るして、布と光とその後ろに透ける力強い躯体だけの空間を試みた。</p> -
001Creating
Only the Ground
日本語⇄地だけを作るDesty銀座2号店<p>プライベート/パブリック、あるいは図/地の配列やその関係性を生み出すことが建築設計の大きなテーマの一つである。</p><p>Desty銀座2号店においては、早々に個室の与件(2.6m×2.6mの箱状空間+パーソナルトレーニングに集中するために開口を持たない)が定まったため、路地状の地だけを作るということを考えた。</p><p>良い“地”とは多様な行為を受け入れつつ、そこにいる人々が居心地の良さを感じる場所であるだろう。そのため、直線上の見通せる空間・広くて集まれる空間・回遊性があり歩き回れる空間・行き止まりで見られない空間など、様々な性質の空間を組み合わせて設計をおこなった。</p><p>ただし、それだけでは地“だけ”にはならない。図としての個室が存在する以上、それらとの関係性が生じるからだ。</p><p>そこで、個室を“消す”ことにした。まず、制約から個室の壁は天井まで作ることが出来なかったのだが、その場合普通であれば縦材と横材でフレームを組むことになり、個室の構造があからさまに見え、その存在が意識される。それを避けるため、床に固定された木ピースにリブ状の縦材をはめ込む形で強度を担保し、個室は床からの片持ちだけで成立させた。</p><p>扉には構造のリブ材と同様のものを化粧として取付け、隠し扉のようにして存在を意識させないようにした。構造と化粧のリブを同寸法・同ピッチにして混在させ、部材の意味を曖昧にすることで純粋な地だけを作ることを試みた。</p>